• ネガティブな感情に悩んでいませんか?ブログ「思考の余白」では、脳科学や心理学の知識をヒントに、小さな習慣で自分を好きになる思考法を発信しています。

    vol.29 感情の波を鎮める利他行動:自己肯定を築く脳科学的習慣術

    vol.29 感情の波を鎮める利他行動:自己肯定を築く脳科学的習慣術 HAKU

    目次


    毎日を自分らしく、幸せだと感じられるような日々を過ごしたい。

    そう思っていても、なぜか気分が沈んでしまう日がある。メイクをする気力さえ湧かず、鏡に映る機嫌の悪そうな自分を見てはため息が出る。

    そんな日は人と会うのを避け、下を向いて歩いてしまう。
    スーパーのレジの店員さんが丁寧すぎることにさえイラついてしまい、一日の質が音を立てて崩れていく。

    そんな「気分の波」に振り回されるたび、お気に入りの音楽やポッドキャストを聴くのだが、それでも気分を紛らわせられない時は、とことん全てがどうでも良く思えた。

    けれども、今ならわかる。その「不調」は、私自身が自分を受け入れられていないサインなのだ。 誰かに気分を上げてもらおうと期待する受け身の姿勢では、本当の意味で人生を乗りこなすことはできない。

    自己肯定感の真実:利他行動が世界で好かれる理由

    星友 啓氏の『全米トップ校が教える自己肯定感の育て方』という本を読んで、私はハッとさせられた。この本には、「優しくて相手を許容できること」が、世界中のどの文化圏でも最も好かれる性格だと科学的に証明されていると書かれていた。さらに、「人に優しくしている自分は、周囲から受け入れられている」ということに気づくという話も印象的だった。

    正直に言うと、私は利他的なマインドを1%も持ち合わせていない、完全に自己中心的な人間だ。その日の気分で感情がコロコロ変わるため、常に自分の感情を優先し、人に優しくできない。できたとしても、それはたまたま機嫌がよかっただけの話だ。利他的なマインドを持つというのは、かなり辛く厳しい苦行のような考え方だと感じた。しかし、この本を読んでから、意識して実行するようにした。

    クリニックでの習慣化:心のフィルターを外す優しさ

    まず、患者さんへの接し方を意識的に変えてみた。

    1. カルテを見るのではなく、必ず患者さんの目を見て、体調の変化がないか聞くようにした。
    2. 耳が聞こえにくい人にも、わかりやすい挨拶や相槌を心がけた。
    3. 話しかけやすい雰囲気を作るようにした。

    たったこれだけのことだが、驚くべき変化があった。「診察室では言えなかった不安」や「家庭の事情」を、患者さん自ら打ち明けてくれるようになったのだ。 私が心のフィルターを外し、柔らかな雰囲気を纏うだけで、閉塞していた人間関係の空気が一気に解き放たれていく。

    誰かを救おうとして始めた行動が、実は、誰よりも私自身の凍りついた心を救っていたのだ。利他とは、自己犠牲ではない。 それは、自分自身を深い愛で満たすための、最も理にかなった「戦略」だった。検査中に話せる時間は限られているが、それでも、患者さんの言葉の端々から、彼らが抱えている悩みを拾い上げ、医師にスムーズに伝わるようカルテに記入した。

    いつも怒っているように見えた人が、私が丁寧に接するだけで、絞り出すように「ありがとう」と言ってくれた。その時、彼の中にあった「誰かに大切にされたい」という痛いほどの渇望に、私は初めて触れた気がした。

    また、いつも上の空だった人が、私の真摯な眼差しを感じた途端、家族の介護で十分に眠れていない過酷な日常を打ち明けてくれた。

    私の纏う空気が柔らかくなったことで、彼らの心の重荷が、ほんの少しだけこちらに預けられたのかもしれない。

    この経験は、私自身の心を大きく揺さぶった。 それまで私が世界に向けていた「不機嫌」という名のフィルターが、いかに歪んでいたかを思い知らされたのだ。

    優しい行動がオキシトシンを呼び、自己肯定感という栄養になる

    「人に優しく接する」という行動を続けた結果、嫌な人にもそれぞれ理由があったことを知った。そして、悩みを打ち明けてもらったことで、「人に優しくしている自分は、周囲に貢献できている」と実感できるようになった。その結果、自分は相手に受け入れられているのだと確信できた。

    利他的なマインドは、「私はあなたの味方です」というメッセージを相手に送る行為なのかもしれない。実際、そのメッセージを受け取った相手が心を開くことで、自分は社会の中で受け入れられているという感覚が生まれ、それが自己肯定感に繋がることがようやくわかった。

    こうして自己肯定感が上がると、仕事中の対応がとても楽になった。他者への優しさが、巡り巡って自分の心を軽くしてくれたのだ。朝嫌なことがあって仕事前に気分が乗らない日でも、誰かに優しくするという行動が、自分自身を喜ばせることにつながった。

    心理学では、「利他行動(altruistic behavior)」が幸福感や自己肯定感を高めることが広く知られている。誰かのために行動することは、脳内で幸福ホルモンであるオキシトシンやセロトニンを分泌させ、ストレスを軽減する効果があるという。つまり、誰かに優しくすることは、自分の心を満たし、人生の質を底上げするための、極めて合理的で科学的な方法でもあるのだ。

    継続のメタ認知:感情の波を鎮めるための科学的習慣

    もしあなたが、今人と関わることに難しさを感じているなら、まずは小さな行動から始めてみてはどうだろう。職場で人に優しくする、電車で席を譲るなど、どんな些細なことでも構わない。

    「自分は優しい人間だ」と意識して行動してみる。

    その思考が、いずれ大きな自信となってあなたを支えてくれるだろう。ストレスを管理し、自己成長を促すための「優しさ」を実践できるような習慣を身につけること。大切なのは、個人の性格や相性を責めるのではなく、健全な行動習慣を築けるような環境を自分自身で整えることにある。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    これは、古代ローマの哲学者セネカが遺した言葉だ。

    「善を行う者は、それ自体が報いである。」

    誰かのために行う親切は、見返りを求める必要がない。
    なぜなら、その行為そのものが、あなたの心を満たし、自己肯定感を育む最も確実な方法だからだ。誰かの心を温めることが、巡り巡って自分の心を温めてくれる。優しい行動が、あなたの心の基盤を豊かにし、揺るぎない自己肯定感を築き上げてくれるだろう。

      HAKU

      30代、地方在住。クリニック勤務。自己肯定感は高いのに超ネガティブ思考、という矛盾の中にいた。私の世界を変えたのは脳科学。「幸せは自分でつくれる」と確信した。ここに綴るのは自分を変えるべく向き合った2025年の行動記録。あなたの「思考の余白」になれば嬉しい。

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