• ネガティブな感情に悩んでいませんか?ブログ「思考の余白」では、脳科学や心理学の知識をヒントに、小さな習慣で自分を好きになる思考法を発信しています。

    vol.41 会話力を覚醒。「伝わらない」をなくす脳科学的思考法

    vol.41 会話力を覚醒。「伝わらない」をなくす脳科学的思考法 HAKU

    私は、話すことが大の苦手だ。
    特に物事を順序立てて論理的に説明するのが、最も苦手である。

    そんな私に対し、夫はいつも容赦なかった。「何が言いたいのか伝わってこない」「一体なんの話をしているの?」。以前の私は、その言葉を聞くたびに「文脈から察する能力が足りないからわからないんでしょ」と、伝わらない原因のすべてを相手に押し付け、心の扉を閉ざしていた。

    しかし、医療関係で働くうちに、話が相手に伝わらないのは、自分に原因があるのではないかという、残酷な真実に気づき始めた。

    伝わらない原因:会話のボトルネックと論理構成

    「言葉の使い方が美しい人」として一番最初に思ったのは、過去に総合病院で働いていた時に会った消化器外科のN医師だった。 患者さんが途切れた診察室から漏れ聞こえる彼の話し方は、驚くほど整理され、流れるように綺麗だった。

    医師という立場から、患者さんに説明するスキルが求められるのは当然だが、そうではない医師も多いのが現状だ。

    自分の知識だけで完結しているような説明では、患者さんの理解度が極端に低くなり、医療における情報格差を生む。実際、勤務医の約3割がトラブルを経験し、医療事故の約7割近くがコミュニケーションエラーから発生しているというデータもある。このようなデータからも、医師の真のスキルは経験年数ではなく、患者への想像力に依存すると強く感じる。

    結局、「伝わらない」のは相手の理解力が低いからではなく、「伝える」側の論理と構成が甘いからだと、この時期に痛感したのである。

    共感の鍵:「例えば」が作る想像力

    消化器外科のN医師は、専門用語は一切使わず、とにかくわかりやすく話していた。そして話の度に「例えば」を使って、誰にでも思い浮かべられるイメージを作り、相手に柔らかくボールを投げるように言葉を発していた。

    同じ空間で聞いていた私にもよくわかる内容のもので、ずっと喋っていて欲しいと感じるほどだった。

    現在の職場であるクリニックのDr.も、まさにその話し方をする医師だ。子供からお年寄りまで、本当にわかりやすく話している。

    例え方のレパートリーも多く、難しい言葉は一切使わず、相手のための言葉を選びながら説明している姿を見ると、心から尊敬する。

    難しいことを、難しそうな顔で話すのは簡単だ。しかし、本当に知性が高い人は、相手に合わせて言葉を「翻訳」することができる。知識の量や語彙の豊富さをひけらかすのではなく、相手が今何に困り、どんな言葉なら受け取れるのかを徹底的に想像する。コミュニケーションの質とは、語彙力の多寡ではなく、相手への想像力の深さに比例するのだ。

    メタ認知:頭が良い人の「話す前の思考」

    安達 裕哉氏『頭の良い人が話す前に考えていること』という本で、今話題に出した2人のDr.のことが多く書かれていた。彼らの話し方は、まさに「頭が良い人の話し方」を体現していたのだ。

    • 相手のために言葉を使う
    • 相手のレベルに合わせてわかりやすく伝える
    • 感情的にならず冷静に話す
    • 話す前に相手の求めている結論を考える

    これらの要素が一致していたからこそ、多くの患者さんが「先生に診てもらいたい」と訪れるのだろう。信頼と影響力は、言葉の選び方に多く含まれている。

    私も近くで勉強させてもらいながら、その影響を強く受けている1人である。
    伝えるべき内容を「相手の視点」で考えることは、メタ認知(自分の思考を客観視する力)の訓練にもなる。話す前に相手の頭の中を想像し、「この人は何に一番困っているのか?」「どんな結論を求めているのか?」を先回りして考えることで、会話の無駄を極限まで減らせるのだった。

    この「話す前の思考」を習慣化することは、認知行動療法の観点から見ても、コミュニケーションの不安を軽減し、冷静さを保つことにつながる。感情的にならずに論理的に話すことで、相手の脳に負担をかけずに情報を受け渡すことができるのである。

    行動変容:ロールプレイングで会話力を習慣化する

    もし、あなたも私と同じく説明が苦手で、人との会話が億劫に感じるとしたら、一つ視点を変えてみてはどうだろう。

    身の回りで話の流れが綺麗な人がいないか見て、もしいたら少しずつ真似をしてみる。なりたい人をイメージして、その人が言うように自分もやって見る。まずはそこから始めてみよう。

    意識するのは「あの人ならどんな風にこの内容を相手に伝えるだろうか?」という視点だ。イメージが湧くと、それを演じるような振る舞いができてくることだろう。

    これは、自分の脳を「伝わる話し方」モードに切り替えるための、最も簡単な認知行動療法である。あなたの周りにいる「話し方が綺麗な人」こそが、あなたの自己成長を加速させるための最高の教材になるはずだ。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    20世紀ベルギーの哲学者、ハイム・ペレルマンが遺した言葉だ。

    「話し手は、話しかけようとする相手に順応しなければならぬ。」

    あなたの言葉の伝え方を変えることは、人間関係の質と仕事の成果を劇的に変える、最も強力な自己投資となる。今日から、相手の「聞く準備」に合わせて、話し方を設計してみよう。相手のために言葉を選ぶ習慣こそが、あなたの信頼と影響力を高める。どんな言葉を選ぶか考えることから、あなたの世界はゆっくり変わり始めるはずだ。

      HAKU

      30代、地方在住。クリニック勤務。自己肯定感は高いのに超ネガティブ思考、という矛盾の中にいた。私の世界を変えたのは脳科学。「幸せは自分でつくれる」と確信した。ここに綴るのは自分を変えるべく向き合った2025年の行動記録。あなたの「思考の余白」になれば嬉しい。

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