• ネガティブな感情に悩んでいませんか?ブログ「思考の余白」では、脳科学や心理学の知識をヒントに、小さな習慣で自分を好きになる思考法を発信しています。

    自然

    vol.13 「ランナーズハイ(脳内麻薬)」で自己肯定感を上げる行動変容術
    vol.13 「ランナーズハイ(脳内麻薬)」で自己肯定感を上げる行動変容術 150 150 HAKU


    自分のことが信じられず、他人の幸せばかりが目に映る日々。

    そんな自分から脱却したくて、私は「即効性のある快楽」を脳科学に求めた。 それが、最強の脳内麻薬とも言われる「エンドルフィン」だ。

    このホルモンは「脳内麻薬」と呼ばれ、モルヒネに似た鎮痛作用と幸福感をもたらすという。とにかく時間がない。自分のことが嫌いな時間を減らしたいという一心で、手っ取り早く自分の脳内にエンドルフィンを分泌させたかったのだ。

    脳内麻薬:エンドルフィンを出すための多様な方法

    エンドルフィンを分泌させる方法は、運動や心の状態、食事など、いくつかあるらしい。脳関係の本でいくつか見たが、詳しく書いている本に出会えていなかったので、AIで調べたところ、以下のようなパターンがわかった。

    • 運動: ウォーキング、ジョギングなどの有酸素運動
    • 感情や心理状態: 大いに笑う、感動する、恋愛感情
    • 強い信念: 困難な状況でも「きっと大丈夫」と信じる
    • 食事や感覚: 甘いもの、スパイス、性行為
    • リラクゼーション: 深呼吸、入浴、瞑想

    ランナーズハイと苦手克服がもたらす成長

    エンドルフィンについて調べるうちに、私が最も心惹かれたのは「ランナーズハイ」という言葉だった。ちょうどそのタイミングで、母親の本棚に西東社編集部により出版された「人生を変える言葉2000」という本があり、その中に書かれていた、マラソンランナー高橋尚子さんの言葉に強く心を動かされたのだ。

    「明日のジョーのように、戦い終え、そのまま頭の中が真っ白になっていくほど走れたら本望なんです。」

    マラソンランナーとしての高橋尚子さんのことはあまり詳しくないため、どんな想いからこの言葉を言ったのかはわからない。それでも、この言葉から多量のエンドルフィンが分泌されているのかもしれないと、直感的に感じたのだ。

    友達と会ったり、音楽を聞いたり、甘いものを食べたりしても、それは一時的な幸せでしかなかった。私が求めていたのは、苦しいけれど、それを乗り越えることで成長を実感できる「何か」だった。それが、今まで経験したことのない「ランナーズハイ」になることかもしれないと感じた瞬間だった。

    ランニングが変えた、私の脳と心

    小学生の頃、マラソン大会はいつもビリに近い順位だった。呼吸が乱れ、心臓が破裂しそうなほどバクバクする上、口の中が血の味がし始めるのが嫌で嫌で仕方なかった。年に1度しかないイベントだったのだが、私にとって長く走り続けることは、生きている中で一番つらい運動でしかなかった。

    しかし、その苦手意識が強い分、克服できたらその成長は計り知れないとも思えた。死ぬほどやりたくないけど、走れる自分を見てみたい。できなかったことができるようになったら、どれほどの効果があるのか、試してみたかったのだ。

    4月からランニングを始め、2ヶ月後には2kmだった距離が、5kmまで走れるようになった。この変化は、体力だけではなかった。

    走り終える5km地点に近づく頃には、どんなに嫌なことがあっても「まあ、大したことじゃないか」と思えるようになっていた。ランニングを終え、クタクタの体でシャワーを浴びてコーヒーを飲むと、今までにはなかったポジティブなエネルギーが湧き出てくるのを感じられた。

    明らかに、脳内が良い方向に変わっていたと実感したのだ。

    行動変容の鍵:習慣化とポジティブな連鎖

    ランニングは、ただのつらい運動ではなかった。私の心をコントロールするためのツールだったのだ。走ることで、脳内にはポジティブな感情を生み出すホルモンが分泌される。体が動けば、心も自然と上向きになることがやっとわかった。

    私のように、エンドルフィンを出すための行動が、もしかしたら苦手なことかもしれない。しかし、やってみなければわからないことは、世の中には無限に存在する。やってみて、「やっぱり嫌」ならそれでいい。

    正解は一つじゃない。数学だって、解き方は色々ある。でもきっと、答えはあなたの中にしかない。いろんなことを試しながら、幸福感のホルモンを分泌させてみよう。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    古代ギリシアの哲学者アリストテレスが遺した言葉だ。

    「重要なのは何が与えられているかではなく、与えられているものをどう使うかだ。」

    私たちは、生まれつきの才能や環境に恵まれなくても、今持っているものをどう使うかで、新しい自分を創り出せる。ランニングが私にとってのツールだったように、あなたにもきっと何かが見つかるはず。大切なのは、「やってみる」という小さな一歩なのだから。

    自分の脳を意識し、刺激を増やしてみよう。

     

    vol.14 脳科学が証明する「偶然」を「必然」に変える方法
    vol.14 脳科学が証明する「偶然」を「必然」に変える方法 150 150 HAKU

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    私は高校生の時から、図書館という場所が大好きだった。あの頃は、試験勉強が主な目的だったけれど、放課後や休日に友人と会える、特別な場所でもあった。それが今では、子どもと一緒の空間だ。しかも、児童書コーナーのみ。大人の本が並ぶエリアには、縁がない日々が続いていた。

    そんなある日、子どもと児童書を読んでいた時、同じフロアにある雑誌コーナーで、Forbes JAPAN編集部の「フォーブス」に目が止まり、立ち止まった。その号のタイトルは「10代と問う、生きる、働く、学ぶ」。文字が少なく、とてもシンプルな表紙だったのだが、この3つのキーワードが気になり、手に取った。

    フォーブスは、アメリカ発祥の世界的な経済雑誌だ。ビジネスを動かす「人」にフォーカスし、そのサクセスストーリーや生き様が書かれており、読んですぐに夢中になった。どのページも情熱にあふれる人たちの話ばかりで、刺激を受ける1冊だった。

    さらに同じコーナーで、もう一冊気になる雑誌を見つけた。『THE21』編集部の「PHPビジネスThe21」だ。この頃からアプリ開発に興味があった私にとって、「AI仕事術」というタイトルは無視できなかった。ノウハウや活用法、AIを使いこなすためのおすすめツールなどが書かれていて、どちらの雑誌も内容が濃く、知的好奇心を満たしてくれるものだった。私は本のタイトルを覚え、家でじっくり読むために、「もう帰りたい」と嫌がる子供にお願いをして、その足で書店へ向かった。

    「カラーバス効果」が示す目標達成の世界

    この一連の行動から、私はあることに気づかされた。
    なにおれ氏の『ミニマリスト式 超人生戦略』という本に書かれていた「カラーバス効果」だ。これは、ある一つのことを意識すると、それに関する情報が無意識のうちに自分の手元に集まってくる現象らしい。

    「フォーブス」も「PHPビジネスThe21」も、私の脳が「これは自分にとって必要で、興味がある情報だ」と判断し、無意識に見つけたのだと思う。今まで一度も手に取ることのなかった雑誌に、吸い込まれるように惹かれていったこの体験は、まさにピタッとハマったという感覚であった。脳の持つ力は本当にすごい。この出来事を通して、自分の視野がぐっと広がった気がした。

    脳科学的裏付け:フィルタリング機能「RAS」の正体

    しかもこのカラーバス効果には、脳科学的な裏付けがある。
    私も最近になって知ったのだが、私たちの脳にはRAS(網様体賦活系)というフィルタリング機能があるのだ。

    私たちの脳は、毎日、膨大な量の情報を受け取っているらしいのだが、その全てを処理することはできない。そこでRASが「自分にとって重要ではない」と判断した情報をシャットアウトし、必要な情報だけをふるいにかけているというのだ。

    カラーバス効果は、このRASの働きを意識的に利用する行為となる。「アプリ開発に興味がある」「ブログを書きたい」と明確に意識することで、RASはそれらを「重要だ」と判断する。結果、普段なら見過ごしてしまう雑誌のタイトルや、ウェブ上の記事が自然と目に入ってくるようになる。

    つまり、あなたが素晴らしい情報やチャンスに出会うのは、単なる偶然ではない。あなたが自分の目標を明確にした結果、脳の仕組みを活用して引き寄せた必然なのだ。

    ポジティブ思考を促すメリット

    このRASの働きを意識して利用することには、以下のようなメリットがある。

    1. 集中力とパフォーマンスの向上:目標に意識を集中させることで、脳は不要な情報処理にエネルギーを浪費しなくなる。目の前のタスクに必要な情報だけに集中でき、生産性がアップする。
    2. ポジティブ思考の強化:自分の目標や好きなことに意識を向けることで、RASはポジティブな情報を集めやすくなる。これにより、自己効力感(自分ならできるという感覚)が高まり、モチベーションが維持されやすくなる。
    3. 思考の柔軟性と創造性の向上:意識的に多様な情報に注意を向けることは、脳に新しい刺激を与える。異なる分野の知識や経験が結びつき、新しいアイデアや問題解決策が生まれやすくなる。

    つまり、RASを意識することは、忙しい私たちにとって、人生を効率よく豊かにするための裏技とも言える。

    習慣化の本質:優秀さは行為ではない

    私たちは、自分の人生を自由に作れる。どんな情報を集め、どんな思考を持つかは、すべて自分自身で決められるのだ。このカラーバス効果を使いこなすことで、あなたは無意識のうちに、自分の理想とする未来に近づく。

    これは、単なる思考法ではない。
    最終的には、行動を続けるための習慣に繋がっていくだろう。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    これは、ドイツの哲学者フリードリヒ・ニーチェが遺した言葉だ。

    「今日なし得ることは、今日中にせよ。然らずんば明日もまた不可能なり。」

    大きな成功も、理想の自分も、日々の小さな習慣の積み重ねによって創られる。そして、「意識する」という行動の習慣こそが、カラーバス効果を最大限に引き出す鍵となる。今日から、あなたが本当に興味を持っていること、心から知りたいことを一つ、意識してみよう。

    vol.23 「過去の呪縛」を断つ!DMNを止めて今に集中する自己受容の習慣化
    vol.23 「過去の呪縛」を断つ!DMNを止めて今に集中する自己受容の習慣化 150 150 HAKU

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    私は今までずっと、変えられない過去に縛られて生きてきた。というよりも、長い間、自分のことを意識的に目に見えない「過去」という鎖に繋いで生きてきた。

    何かやりたいことがあっても行動に移すのをためらい、新しい人との交流も避けてきた。「それが一番楽で安全な生き方だ」と思い込み、いつも自分の範囲内でしか行動していなかった。

    心の奥底には、いつまでも消えない不甲斐ない記憶が、水を変えずに放置していた水槽のように、重い沈殿物となって澱んでいた。

    そんな私に変化をもたらしたのが、苫米地 英人氏の『頭のゴミを捨てれば脳は一瞬で目覚める』という本だった。この本には、未来が良くなっていれば、過去も現在も最高になると書かれていた。運動や勉強を始めて、この思考を取り入れたことで私は少しずつ変わっていった。

    「未来の自分が良くなるか悪くなるかが、今の自分次第だとしたら?」

    そう考えると、未来の最高の自分を作るために、今できることに集中して行動することができた。辛く暗い経験をこれからも増やし続け、自分のことを嫌いになりたくなかった。

    私がこれから変えていきたいのは、自分を信じられるような行動をとること。 そのために、今の自分にできること、やるべきことは、泥臭くたって何だって、すべてやってやるつもりでいた。

    正直に言えば、この時の私は「わらをもすがる思い」でしかなく、自分を救ってくれるそのわらを、ずっと探し続けているような状態だったのかもしれない。

    過去の呪縛の解放:未来が過去の意味を書き換える

    過去の出来事に対する感情は、私たちの脳に深く刻み込まれてしまう。特にネガティブな経験は、あたかも現実で起きているかのように、何度も脳内で勝手に反芻される。これは、脳が危険を回避するために、嫌な出来事を強く記憶する性質を持っているからだ。そのせいで私たちは、いつまでも過去の呪縛から抜け出せないのだ。

    大切なのは、そのループを断ち切ること。
    過去を無理に忘れようとするのではなく、未来を良くすることで、過去を相対化することが出来る。

    未来が良くなれば、今の自分は「最高の未来に向かって進んでいる途中」とポジティブに捉えられる。すると不思議と、過去の嫌な出来事も、「あの経験があったからこそ、今の私がある」と感謝すらできるようになる。つまり、未来への希望が、過去の意味を書き換えてくれるのだ。

    この過去の呪縛から解放される思考術の核心は、「今」に集中することなのである。

    ナイキの可視化:「小さな成功体験」が未来を創る

    ランニングを習慣にして2ヶ月ほど経った頃、NIKEのRUNというアプリを入れて、走る距離や時間を可視化してみた。記録して1ヶ月経つ頃に「これ最近始めてさ…」と何気なくアプリを見せると、夫はアプリの画面をスクロールしたりタップしながら「今月、これだけ走っているじゃん」と教えてくれた。

    私はその日走った距離と時間がわかればいいと思っていたのだが、今までの総距離を知った途端、「こんなに走っていたんだ!」と、思わず声が出るほど嬉しくなった。その日その時の「今」に必死だった小さな積み重ねが、いつの間にか大きな地層のように積み上がっていた。その事実は、過去の不甲斐ない自分をまるごと肯定してくれるような、確かな『自分への信頼』に変わった瞬間だった。

    過去の出来事は変えられない。けれど、その意味を決める未来なら、今この瞬間からいくらでも作り変えていけるそのために、「今」に集中できる行動を見つけ、実行することが必要となる。自分を嫌っていたからこそ、その穴を埋めるように、自分にとって良いと思える行動にひたすら集中した。

    必死に手を動かし続けたその先で、気づけば手にした結果は、想像していたよりもずっと大きく、私の世界を塗り替えていた。

    脳科学:DMNを今で満たす習慣化戦略

    それでも過去に引き戻されそうになったら、専門的な本をパッと開いて読んだり、複雑な計算問題を解いてみたり、強制的に「今」に集中できる何かを自分で用意することも大切だ。

    過去のネガティブな記憶が呼び起こされるのは、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)」という機能が関わっていると言われている。これは、ぼーっとしている時や何もしていない時に活性化し、過去の反省や未来の不安といった思考を巡らせる働きだ。

    だからこそ、意識的に脳を「今」に集中させる必要がある。

    普段の生活中、過去を思い出してモヤモヤ、イライラしてきたら、自分が大切にしている理念を書いた手帳をこっそり見るようにしている。そして、そのために今何を考えなければいけないのか思い起こす。その結果、意識は過去ではなく「今」に向かう。これにより、自然と頭の中は未来に向けて「今すべきこと」に集中できるようになる。

    未来がよくなる行動を今から少しずつ始めて、小さな成功体験を増やし、過去を思い出す脳のスペースを狭くしてみよう。そうすれば、あなたの脳は、過去を振り返る暇もないほど「今」と「未来」でいっぱいになるはずだ。

    今に集中することこそ自己受容のスタートライン

    過去の上に成り立っている現状を「今はこれで良い」と受け入れる。
    「ああするしかなかった」と過去の自分を受容することで、今に集中できる。この集中こそが、私にとっての成長だった。過去の自分の全てを受け入れることは、とても勇気がいることだ。

    私もそうだったので、それは痛いほどわかる。

    しかし、新しい行動を起こし小さな成功を積み重ねるたびに、あなたの脳は未来に向けた希望で満たされていく。この意識こそが、自分を信じるための行動に繋がり、そして、その先の未来をより良いものに変えるのは「今の行動」なのだ。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    これは、古代ローマの哲学者マルクス・アウレリウスが遺した言葉だ。

    「未来を心配するな。心配は、未来を創る今の力を消耗させるだけだ。」

    未来を心配するよりも、「今」に集中すること。それが、あなたの人生を切り拓く確かな道となり、この瞬間の行動こそが、あなたを最高の未来へと導く習慣と変わるのだ。過去はもう、終わった話だ。過去を断ち切り、未来のために「今」を生きよう。

    vol.35 集中力は資産 : デジタル断食で思考の余白を創る時間術
    vol.35 集中力は資産 : デジタル断食で思考の余白を創る時間術 HAKU

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    自分のやりたいことが見つかると、スマホでの連絡が途端に億劫に感じるようになった。今までは全く気にしていなかったはずの通知が、届くたびに私の平穏を乱し、かすかな苛立ちを連れてくる。

    母からのメールにさえ、「朝から猫の写真、送ってこなくていいんですけど」と、またしても沼地からライフル銃をかまえた自分が、ぼそっと耳元で囁くようだった。

    1日の中で、私には朝しか自由に使える時間がない。
    そのため、この時間で最大限の活動をする必要がある。

    誰にも邪魔されたくないという「朝」への執着が増すにつれて、私の決意はより強固なものになっていった。

    「今」に集中:スマホの通知は時間を奪う敵

    しかし、自分のやりたいことが明確になってからは、時間に対する考え方が180度変わった。「今」という一瞬一瞬が、未来の自分を作っている。そう考えると、スマホの通知は、私から大切な時間を奪おうとする「敵」のように感じるようになった。

    特に朝の時間は、私にとって最も重要な時間だ。
    この「思考の余白」は、外部情報に支配されない、自らの意志で使うための静かな空間だ。そんな貴重な時間を、スマホの通知に邪魔されたくないと思うのは、ごく自然なことだった。

    集中力は現代の資産:メールストレスの科学

    よく「成功者は返信が早い」と言われる。 けれど、その言葉を鵜呑みにして自分に当てはめれば、私も彼らに近づけるのだろうか。

    思考を止めて盲信する前に、私は一瞬、立ち止まって考えた。

    私は比較的メールの返信は早い方かもしれないが、LINEで仕事の連絡をすることはない。それならば、家族の緊急性のある連絡に対してだけ素早く返し、その他は自分のタイミングで良いのではないかと結論が出た。仕事ができる人は、それが「仕事」だから早いだけ。 あるいは、成功者と呼ばれる人たちは、プライベートの境界線が仕事と溶け合っているだけなのかもしれない。

    そうした仕事で人間関係が回っている人たちの真似を、今の私が貴重な朝の時間を使ってまで無理してやる必要があるのだろうか。自分にとって本当に大切な人との関係は、通知の速さで決まるわけではない。むしろ、質の高いコミュニケーションを、お互いが心地よいタイミングで取る方が、ずっと豊かな関係性を築けるはずだ。

    グロリア・マーク氏の『アテンションスパン デジタル時代の集中力の科学』という本には「私たちが1日に使える集中力は限られている」と書かれていた。メールに費やす時間が長ければ長いほど、人々が受けるストレスは増大するという。多くの現代人は、メールの処理だけで一日の集中力のタンクを使い切ってしまっているのだ。この事実を知り、私はさらに警戒を強めた。朝の貴重なタンクを、緊急性のない連絡で枯渇させるわけにはいかない。

    デジタル断食:ゴールデンタイムを守るための賢者の孤独

    夜は21時までに寝てしまうので、その間に届いていたメールは朝一で返信した方がいいとは思うが、私の起床時間(4時)に連絡を返すのは気が引ける。結局、よほどの緊急性がなければ家を出る前か出勤中に返信する程度で十分なのだ。

    朝のゴールデンタイムは、試行錯誤しながらも自分のために作り出した大切な時間である。
    このわずかな時間に使える集中力を、緊急性のない連絡に削る必要はない。必要な情報と、そうでない情報は見る時間をはっきりさせる事が重要だ。本当に緊急で連絡がほしい時は、相手に電話をすればいいだけの話なのだ。このルールは、相手にもあらかじめ伝えておくことも大切である。

    これは、自分の時間を守るための「デジタル断食」のようなものかもしれない。不必要な情報を遮断し、本当に大切なことにだけ注意を向ける。そうすることで、心にゆとりが生まれ、集中力も高まのだ。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    それは、ドイツの哲学者ショーペンハウアーが遺した、こんな言葉だ。

    「賢者は孤独を愛し、凡人は孤独を恐れる。」

    私たちは、つい孤独を避け、他者とのつながりを求めがちだ。しかし、本当に大切なのは、一人になる時間の中で自分と向き合うことなのだ。そうすれば、他人の評価や連絡の速さに振り回されることなく、自分の時間を自分のためだけに使えるようになるだろう。

    vol.38 ストレス解消の自然療法:「畏怖の念」が思考の余白を創る
    vol.38 ストレス解消の自然療法:「畏怖の念」が思考の余白を創る HAKU

    私が育った場所は、いわゆるコンクリートジャングルだった。視界を遮るようにマンションが立ち並び、植物は限られ、川のせせらぎさえも遠い世界。夜空の星には点滅する飛行機の光が混ざり、強度近視の私にはその区別さえつかなかった。
     
    虫も動物も、カラスや鳩、蟻やセミといういわゆる定番の生き物しか目にすることはなかった。図鑑で見るような宝石色の虫は、もはやファンタジーの産物。ホタルに関して言えば、ツチノコと同じくらい、非現実的な生き物のように感じていた。田んぼにいる鷺を見た時は「通報しなければ」と思うほど、カラスや鷹よりも大きな鳥を、30歳になるまで自然界で見たことがなかった。

    東京に住んでいた頃は、四方八方にマンションやビルが多く建っていたため、遠くから雨雲が迫っていることも気付くことはなく、洗濯物を干したあとに土砂降りの雨が降ることも多かった。仕事が休みの日、窓を開けてベッドから見上げた空は、建物の隙間に切り取られたほんのわずかな断片。やりたいこともなく過ぎる毎日と、その隙間から流れるように消えゆく鱗雲は、どこか似ているような気がしていた。

    そして地元に戻った今の家も、空の広さは東京ほどではないにせよ、コンクリートに囲まれている環境はさほど変わっていない。早朝に帰宅する酔っ払いが喚く声や、カラスの鳴き声が響くマンションの一室で、夫と子供と静かに暮らしている。

    都会の脳疲労:「自然への投資」が欠けていたピース

    常に人工的な情報とノイズに囲まれてきた私の脳は、「自然に触れることがストレス解消になる」という概念自体を知らずに生きてきた。

    そんな中、フローレンス・ウィリアムズ氏の『自然が最高の脳を作る』という本を読んだ。自然に触れるとストレスが解消されて脳が働くようになるのだという。都会を歩いている時と比較して、森の中を歩いている時の方がストレスホルモンの値が下がることがわかっているらしい。

    この本が提唱する「自然への投資」こそが、私の生活に欠けていた1つのピースだとハッとした。脳科学的に見ても、人工的な環境は絶え間なく注意を引くため、脳の集中力を使い果たしてしまう。自然の中に身を置くことは、その疲弊した注意力を回復させるための最高のリカバリーだったのだ。

    長年、都会の喧騒や人工的な情報に晒されてきた私の脳は、無意識のうちに疲弊しきっていたのだろう。その疲労は「イライラ」や「不満」という形で表現されていたに過ぎなかった。

    畏怖の念の科学:20分間の魔法と思考の余白

    この本の中には「1ヶ月に5時間は自然の中で過ごすと良い」と書かれている。そして年に一回は、大自然に畏怖の念を抱く経験をすることを勧めている。

    人は畏怖の念のような大自然を見ると、謙虚になり、他者への思いやりや視野の広がり、寛大な行動や好奇心が高まるようだ。この「畏怖の念」は、ネガティブな感情や自己中心的な思考を一時的に棚上げし、心を解放してくれる効果があるという。

    コンクリートと人工物ばかりの環境で育った私が、地元に帰ってきて初めて、思いがけず「畏怖の念」を感じた場所があった。それが、河原沿いのランニングコースだった。

    走り始めてすぐ、沿道に様々な植物が植えられていることに気づいた。7月だったので、ネムノキのピンクの花、美しく咲く紫陽花、民家の庭に生えているラベンダーなど、走っているだけで、季節の豊かさや生命の息吹を感じ、目でも楽しめた。

    ランニングコースは、往復2kmの距離。Uターンして日の出の方向へ向かった瞬間、赤い太陽とどこまでも澄み切った青空のコントラストに、私は言葉を失い立ち止まった。

    富士山の山頂まで行かずとも、河原の上に無限に広がる雄大な空だけで、私は十分に「畏怖」を感じることができたのだ。その瞬間、内側から希望が溢れ出すような感覚に包まれ、抱えていた悩みのスケールが驚くほど小さく見えた。

    これこそが、メタ認知的な「視点の転換」を強制的に引き起こす、自然の魔法なのだ。

    幸福度を高める:経験への投資がもたらす長期的リターン

    この体験は、科学的データとも一致している。

    ミシガン大学の研究では、都市生活を送る人々が自然の中で20分から30分過ごすだけで、ストレスホルモンである唾液中のコルチゾール値が有意に低下することが示された。これは、自然との接触が自律神経系のリラックス(副交感神経の活動)を促していることを裏付けている。

    畏怖の念を感じる経験をすることで、「あぁ、今抱えている悩み事なんて大したことではないのかも」と、物事のスケールが小さく感じられたり、「今日も一日やりきろう!」と前向きな気持ちが湧いてくることがわかった。自然の力は本当にすごい。怖い側面もあるけれど、その中に身を置くことで、心は確実に前向きな思考へと変わる。毎週走り続けたことで、日常で起きたストレスがだんだん小さなことに思えた。

    ストレス解消と称して爆食いするよりも、モノを散財するよりも、定期的に自然の中に身を置き、畏怖の念を感じられるような経験をすることが、どんなストレス解消にも負けない方法になることを行動により実感できた。

    これは、モノを使ってドーパミンを即座にドバドバだす快楽よりも、「経験への投資」が持続的な幸福をもたらすというポジティブ心理学の原則と完全に一致している。衝動買いで一時的に気分を上げても、その幸せはすぐに消える。自然の中でセロトニンやオキシトシンを出した方が、脳と心にとって遥かに幸せなのだ。

    そして、私の心と体を本当に満たすのは、モノの所有ではなく、時間と場所の使い方にあるということが、この体験を通して改めてわかった。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    古代ギリシアの医師であり哲学者であるヒポクラテスが残した言葉だ。

    「自然は、もっとも偉大な治療家である。」

    高価なセラピーや一時的な快楽に頼るのではなく、自然との調和こそが、私たちの心と体のバランスを整える本質的要素なのだ。あなたの疲れた心を癒すために、自然という名の「癒やし」に意識的に時間を投資してみてほしい。

    vol.47 キャリアの危機感をチャンスに変える「船の乗り換え」戦略
    vol.47 キャリアの危機感をチャンスに変える「船の乗り換え」戦略 HAKU

    帰郷後、私は派遣社員として地元の総合病院に勤め始めた。

    配属先の仕事内容は、コロナ関連部署での検査と事務対応だった。通勤時間が30分以内という好条件に加え、総合病院を選んだことで、両親にも「病院で働く娘」として安心してもらえた。当初は大した資格も持っていないのに、「大きな船に乗れてよかった」と、心から安堵を感じていた。

    コロナ号が沈む:危機感がメタ認知を覚醒させた瞬間

    総合病院に派遣社員として入職し、しばらくたった頃に、在職中のコロナ部署が2ヶ月後に終わるかもしれないという話を上司からされた。派遣会社との契約は3ヶ月更新。コロナ部署の終了は、規定外のタイミングとなってしまった。

    幸い、別の部署への配属が提案され、即座に職を失う事態は避けられたが、私の中にあった微かな懸念は、確信に満ちた「危機感」へと変わった瞬間でもあった。

    年末の休みに入り、世間がお休みモードへと変わる中、私は家で転職サイトにかじりついていた。初夢さえ覚えていないほど、頭の中は「次の一手」で埋め尽くされていた。

    この差し迫った危機感こそが、私のメタ認知を強制的に覚醒させた。
    沈みゆく船に乗っている自分を客観視し、溺れる前に次の岸を目指す。生存本能に基づいた、冷徹で素早い判断の始まりだったのだ。

    船の切符:学ぶ力と資格が証明する努力の価値

    岡崎 かつひろ氏の『お金に困らない人が学んでいること』という本に、「学ぶ力がある人が生き残る」と書かれてあり、まさにその通りだと実感した。沈む船から別の船へ乗り換えるためには、自分が有能であることを証明する「切符(カード)」が必要であり、私にとってそれは「資格」だった。

    「私は自分で目標を立て、努力し、それを達成できる人間です」。面接という名の交渉の場で、そう堂々と宣言するための証拠が欲しかった。私は子育ての合間を縫って、病院実務に直結する2つの資格を数ヶ月で取得することに決めた。学びに対する娘の本気の姿勢を見た父は、あの頃よくこう言っていた。「HAKUが勉強しているの、今まで見たことがない」と。そのくらい、自分でも学びを得たいという気持ちで、自発的に何かを学ぶことは人生で初めてだった。

    最終的に総合病院から、現在のクリニックという船に乗り換えることができた。 私の行動の素早さと学ぶ力が、良い方向に傾いた満足いく結果となった。派遣という更新が必要な業種と、コロナという異例の部署が、私の行動をよりスピーディーにさせてくれたのだろう。

    私は「ここまでは絶対に成し遂げる」と期限を設けると、集中力が極限まで高まるようだ。今回のこの差し迫った危機感は、私に「生きるか死ぬか」のような強烈な目標を与えてくれたのだ。

    その目標に向かって進んだ努力のプロセスこそが、知識や資格以上に、私にとっての揺るぎない自己肯定感の確かな土台となった。

    行動経済学:変化できない者が失うコスト

    同じ部署で、沈みかけている船に同乗していた年上の女性がいた。
    私とは対照的に、その人はこちらが焦る状況でも、かなりのんびりしている様子だった。部署がなくなることは同時にわかっていたにも関わらず、彼女は何も行動を起こさなかった。同時期に契約終了となった数週間後、会社から契約を打ち切られたと連絡が来た。

    彼女はメールで「世知辛い世の中だ。」と言っていたが、本当にそうだろうか。

    自ら動かず、現状維持こそがリスク回避だという様子で、昼の休憩中パンをかじりながらスマホを楽しむ彼女を常に見ていた。そのため、私は全く同情できなかった。徹底して受け身の生存戦略を選んだ者に伝えられた、担当者の最終回答が「契約打ち切り」という現実を目の当たりにした。

    生きていくための変化は、明らかに自分のためだ。誰かになんとかしてもらおうと待っていても、結局何も起きない。だからこそ、自分で行動しなければいけない。いつ何時だって、思っていたことと異なる困難が人生に何度もやってくる。そんな時に、船を乗り換えられるような思考や行動を、常に持ち続ける必要があると知れたのだ。

    私のように、期限付きの特殊な環境で働く人や、現状に疑問を感じる場所にいる人は、今すぐにでも次のキャリアへ移るための「切符(資格やスキル等)」を作る戦略を立てた方が良いだろう。自分には何が足りないか。次のステージで何を活かせるか。学ぶことで人生の解像度を上げ、ピンチを飛躍のバネにしていかなければならない。


    最後に、私自身がこの習慣を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。
    イギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンが遺した言葉だ。

    「強いものが生き残るのではない。変化できるものが生き残るのだ。」

    現代社会を生き抜くための、行動経済学的な真理である。
    変化を恐れず、常に切符を準備する必要がある。その切符(資格やスキル)とは、他者に依存しない「学ぶ力」と「変化を読み行動する力」によって裏打ちされるものである。変化し続ける勇気こそが、あなたの人生の大きな資産となるだろう。