• ネガティブな感情に悩んでいませんか?ブログ「思考の余白」では、脳科学や心理学の知識をヒントに、小さな習慣で自分を好きになる思考法を発信しています。

    vol.12 「現状維持バイアス」を破るリスキーシフトで自己成長を加速

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    子どもが幼稚園に通い始めた頃。 自分の存在を、外の世界でも確立したいという欲求が、静かに、でも確実に膨らんでいた。キャリアの岐路で、私は正反対の2つの求人を天秤にかけ、数日間思考を巡らせていた。

    1つ目は、ファッションブランドの工場。家から車で5分。徒歩でも行ける距離にある大きな工場は安定的で、仕事内容も想像通りだった。

    もう1つは園芸店で、接客のほかに鉢植えなどの仕立てもあると書かれていた。仕事内容を見てピンとくるものはゼロという、ほぼ未知の世界の求人だった。さらに、通勤に片道40分かかる県外の職場で、興味はあったものの、比較するまでもないというのが最初の印象である。

    当時の私にとって、植物は「草、花、木」程度の認識だった。観葉植物という言葉さえ知らず、知識があるとかないの問題ではない状態だった。リスクしかないと思える未知への選択に、私の心はなぜ反応してしまったのか。この選択が、その後の思考と人生を大きく変えることになる。

    なぜ私はリスキーシフトを選んだのか

    結局、私が連絡を入れたのは園芸店の方だった。 面接を経て、私の新しい日常はそこから動き出した。

    数日間悩んだのだが、心の中では最初からこっちを選んでいた気がする。植物を買ったことも育てたこともなかったため、全くの無知の状態であったにもかかわらず、「知らないからこそやってみたい」という気持ちがとても強く湧いていた。そこから、植物についての猛勉強がスタートした。

    当時の私にとって、その選択はリスクでしかなかった。安定した近所の企業、想像の範囲内の仕事、そして何より通勤時間の短さ。これらの要素を捨てて、未知の世界に飛び込むことに迷いがなかったわけではない。夫には「職場は近くがいいよ」と言われていたし、義母からも「あの会社は長く働けるよ」と勧められていた。

    しかし、心の中で「知らないことを知りたい」という純粋な好奇心が迷いを打ち消していったのだ。自分の人生を、他者ではなく自分自身で切り開いていくという、解放的な感覚をその瞬間再び味わってしまった。この「知らないを楽しむ」という感覚は、行動経済学でいう「現状維持バイアス」を打ち破る最良の戦略だったと言える。

    神経可塑性:新しい挑戦が脳を強くする理由

    私たちの脳は、一度完成したら変わらないと考える人もいるが、実際は生涯にわたって変化し続ける能力を持っている。専門的には「神経可塑性(しんけいかそせい)」と呼ばれ、脳は柔軟に形を変え、新しい機能を獲得できるというのだ。

    特に新しい体験は、この脳の柔軟性を最大限に引き出す。新しいスキルを学ぶ、新しい場所を旅する、新しい人と出会うといった経験は、脳内で新たな神経回路を形成し、既存の回路を強化する。ハーバード大学の研究でも、好奇心が創造性や柔軟な思考力の向上につながることが示されている(出典)。知識がゼロの状態で新しい世界に飛び込み、猛勉強を始めたことは、結果として私の脳に新しい回路を構築し、人生を豊かにする柔軟な思考力を育んだ。

    自己成長を望むなら、脳に新しい刺激を与えることが不可欠なのだ。

    未知の楽しさとドーパミンの報酬

    ゲイリー・ジョン・ビショップ氏の『あなたはあなたの使っている言葉でできている』という本に「先がわからないから面白い」ことが記されており、今回のことを照らし合わせた結果その通りだと痛感している。人は安定を求めて、どうなるかわからないものを避け、いつも通りのものを選んでしまう癖がある。その結果、人生はつまらないものと思うようになるのだ。

    今だからこそわかる。あの時は、先が読めなかったからこそ、毎日とても楽しかった。わからなかったことが理解できるようになって、少しずつ世界が広がっていくような感覚があった。植物の幅広い内容と種類に「全ては覚えられない」と思うことはあったが、その困難な課題を乗り越えるための努力こそが、辛さではなく楽しさであったことを今でも覚えている。

    新しいことを学ぶことは、脳にとって最高の喜びだ。期待や発見があるたびにドーパミンが分泌され、モチベーションが上がり、さらに学びたいという欲求が湧いてくる。それ以来、私は無意識に「わからない事」を探し、「知らないを楽しむ」という行動を増やすようにしていった。

    これは、思考の余白をネガティブな感情ではなく、ポジティブな好奇心で満たすメタ認知の実践でもあった。

    自己成長と習慣化:困難な道から得る真の豊かさ

    この経験をもとに、「やったことがない」or「面倒なもの」であればあるほど、大きな経験を得られると考えた。「面倒な未知の経験」を選択したことで、大袈裟ではなく、本当に人生が豊かになっていった。

    もちろん、何を選択するかにもよるだろう。今回、私は植物を選んだことで、自然をより身近に感じることができ、心から好きになれた。都会では感じにくかった季節の移ろいを肌と目で感じられるようになり、自然と一緒に生きていると実感できるように変わった。

    困難な道を選ぶことは、一見遠回りに見えるかもしれない。 だが、その道のりには、予期せぬ出会いや発見が待っている。安定した道だけを進んでいたら、決して見ることのできなかった景色だ。そして、その経験は揺るぎない自信となり、次の挑戦への原動力となる。これは、仕事に限った話ではない。趣味や人間関係でも、新しいことに挑戦するたびに、私の世界は確実に広がっていった。ポジティブ心理学でいうところの、「フロー状態(時間の感覚を忘れるほど集中し、活動自体が喜びとなる精神状態)」に近い、充実した日々を送れるようになったのだ。

    メタ認知:視野を広げ、次の自分を創造する

    あなたが今いる場所で満足しているなら、それは素晴らしいことだ。だけどもし、少しでも「何かを変えたい」と思っているなら、一度立ち止まって、自分の心の奥底を覗いてみてほしい。

    「先がわからない」ことに、怖さを感じるかもしれない。でも、その怖さの先には、想像もしていなかった自分に出会う喜びが待っている。私たちは、知らないことややったことのないことに挑戦するたびに、新しい自分に生まれ変わる。それは、自分の脳を再プログラミングするようなものだ。


    最後に、私自身がこの挑戦と自己成長を続ける上で大切にしている言葉を一つ贈りたい。

    これは、ドイツの哲学者、フリードリヒ・ニーチェの言葉だ。

    「世界には、きみ以外には誰も歩むことのできない唯一の道がある。その道はどこに行き着くのか、と問うてはならない。ひたすら進め。」

    このニーチェの言葉こそ、「先がわからないからこそ進む」というあなたの選択の哲学を最もよく表している。変化や困難を恐れず、誰にも真似できない行動を積み重ねること。それが、人生の答えを導くのだ。積み重ねられた行動データこそが、誰にも奪われない自信となる。

    自分の脳を意識し、刺激を増やしてみよう。


      HAKU

      30代、地方在住。クリニック勤務。自己肯定感は高いのに超ネガティブ思考、という矛盾の中にいた。私の世界を変えたのは脳科学。「幸せは自分でつくれる」と確信した。ここに綴るのは自分を変えるべく向き合った2025年の行動記録。あなたの「思考の余白」になれば嬉しい。

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